江戸の落穂 ~河童への付け届け~

夢野晴吉先生のコラム第三十一弾  
江戸の落穂 
~河童への付け届け~をお届けいたします。
 
 
~河童への付け届け~
 
 河童は川に棲む妖怪ですが、江戸時代から伝わるこの河童にまつわる風習についてお話しましょう。
 
 河童の好物といえば胡瓜、お寿司で「かっぱ巻き」と言えば胡瓜ののり巻きの事ですから、河童への贈り物として最適です。
 
 この胡瓜に家族全員の名前を書いて近くの川に流すのです。
 
 水の中で胡瓜を拾った河童が名前を見て、この人達にはいたずらをしないように、水難にあった際は助けてくれるというのが『河童の付け届け』の目的です。
 
 江戸時代には川も多かったでしょうが、川の多くが埋め立てられてしまった後も神田では我が家だけでなく、近所の家でも昭和二十年代頃まで行われていました。
 
 まるで落語の落ちのような「おまじない」が現実にあったのです。