江戸の落穂 ~神田祭に寄せて ①木遣りのこと~
夢野晴吉先生のコラム第四十六弾
江戸の落穂
~神田祭に寄せて ①木遣りのこと~
木遣りは元々仕事師の作業唄ですが、威勢の良さが特に好まれたのか江戸の祭りではかかせないものとなりました。
木遣りは独特の甲声(かんごえ・・・かん高い声)を使うので、同じ様な甲声を使う清元が仕事師の間で好まれました。
実際に私の父もこの甲声のため、清元を稽古していました。
木遣りは「唄う」とは言わず、「呼ぶ」と言って、お祭りの最初は必ず木遣りで出を掛けたものです。その時の呼び声は、
「エンヤリョー」といった調子で、これから始まるぞ、という意味のものです。
こうした勢いの良さが江戸っ子の気性を表す”勢い肌(きおいはだ)”という言葉にも表れているのです。
現在ではまず唄われる事はないと思いますが、野辺送りの弔いをする木遣りまであったと言われておりますので、江戸っ子は最後までこうした気性を持ち続けたのでしょう。
小唄にはこんな唄が残っています。
神田囃子(勢い肌)
♪♪ 勢い肌(きおいはだ)だよ 神田で育ちゃ
わけて祭りの派手好み
派手なようでも すっきりと
足並み揃えてねり出す花山車(はなだし)
オーやんれひけひけ よい声かけて
そよが〆(しめ)かけ中綱(なかづな)ヨイヨイ
オーエンヤリョー
伊達もけんかも江戸の花